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大宮厚生病院は理想の精神科病院を目指して・・・

TEL. 048-683-1861(代表)

〒337-0024 埼玉県さいたま市見沼区片柳1番地

後期臨床研修医の教育プログラム

後期研修制度について

大学病院で長年にわたり教育、研究、臨床を担当した経験があり、現在も国内外の精神科関連学会で活躍している複数の指導医が、丁寧に指導を行ない、精神科専門医ならびに精神保健指定医として必要とされる、知識および技能の習得を目指します。

基本的な方針
「1例、1例を大事にし、病態および患者背景を理解して治療を行うこと」を目標とし、「患者に寄り添い、患者が長年にわたり病気とうまく付き合い、充実した生活が維持できるよう援助し、同時に治療者も患者から学ぶ」という診療姿勢を目指します。

具体的な研修内容について
 精神神経学会研修手帳に従って臨床研修指導医が指導し、精神科医としての知識、技能、態度の習得を目指します。また、担当症例については、指定医および専門医の資格習得に必要な症例が期間内で経験できるよう配慮します。
 担当症例については、指導医とのディスカッションの他に、毎月行われる医局会で報告して治療方針などの検討を行うことができます。また、指定医の症例報告、専門医の症例報告についても、医局会で1例ずつ検討して添削指導します。
 
 精神療法の指導は、将田院長、小島卓也副院長、大島外来診療部長が中心になり指導します。また、集団精神療法については大島外来部長が中心になり指導します。
器質疾患、睡眠障害、てんかん等については小島卓也副院長、小川診療部長が中心になり指導します。そのほか小川診療部長は統合失調症の精神病理学、司法精神医学に詳しく、小久保診療副部長は精神病理学と生物学のバランスのとれた治療を得意としており、大内診療副部長からは重症神経症の精神療法、統合失調症の心理社会的リハビリテーションを学ぶことができます。渡邊理事長は小児外科医の経験をもち、身体疾患の治療について指導を受けることができます。また、細田医師からは精神科救急、老年期敬神医学について指導を受けられます。

 その他、随時、院内勉強会があり、さいたま市でも精神科関連の研究会が多数開催されております。また、地域の研究会においても指導医の指導のもと発表の機会があります。


具体的なプログラム

3年間で、精神科医としての基本的な知識・技能の習得とともに、精神保健指定医および精神神経学会専門医の資格の習得に必要な症例を経験することを目指します。指定医および専門医取得に必要な症例を経験し、指導医から懇切な指導をうけることができます。

年次ごとの計画


 1年目  急性期病棟での研修

・精神保健福祉法の指針に準拠した処遇に習熟してもらうよう入院直後から退院まで随時指導医が指導を行う。
・指導医の面接に陪席することによって、患者との信頼関係の作り方を学ぶ。
・個別の精神障害の急性期治療に習熟してもらうように指導医が指導を行う。

■統合失調症の急性憎悪期
■双極性感情障害の躁状態
■希死念慮の強いうつ状態
■物質関連精神障害

等が中心の研修となる。

・その他入院治療を要するパーソナリティ障害、摂食障害、知的障害、発達障害に関しても、入院直後から退院まで、指導医がレクチャー等をまじえて指導を行う。
・個別の精神障害に対する標準的な薬物療法のやり方を指導医の指導を通して学ぶ。
・個別の精神障害に対する精神療法的な関わり方についても、指導医によるレクチャー等を参考にして主治医として治療に携わることを学ぶ。
・病棟看護スタッフ、精神保健福祉士、心理士、作業療法士、薬剤師とのチーム医療のありかたを学ぶ。


 2年目   ストレスケア病棟での研修

ストレスケア病棟は開放病棟で気分障害(うつ病、軽躁状態、気分変調症)の患者さんや、神経症圏(不安障害、心気症、適応障害、強迫性障害など)の患者さん、摂食障害の患者さんなどが入院しています。また、気分障害で数年にわたって遷延している患者さん、復職がうまくいかないうつ病の患者さんなども入院し治療を受けています。入院時にこれまでの生活史、現病歴、治療経過を詳しく聞き、どのような問題点があるのか、どのような治療法がよいかを検討し、治療計画をたて、定期的に治療効果を見直して治療に当たります。
薬物療法の調整だけでなく、支持的精神療法、認知行動療法、暴露療法、集団精神療法、内観療法などを用いて多面的に治療に当たります。まさに生物・心理・社会的な治療の方法を学んでいただきます。治療の成功例を経験することにより医療スタッフ全員が自信をつけ、精神科の臨床が楽しくなることを目標のひとつとしています。

退院した患者さん向けの外来治療プログラムには以下のものがあり、研修もできます。

外来リワークプログラムについて 
うつ病の患者さんの復職には、症状の改善だけではなく、回復期に様々なプログラムに参加し、復職準備性を高めることが必要です。また反復性うつ病や双極性障害をもつ患者さんには、病状悪化した要因を分析しそれに対する個別の課題を行うことも重要です。
臨床心理士、作業療法士、指導医1名のチームで以下のプログラムを行っています。後期研修医はチームの一員として参加し、また症例検討会に加わることによって、気分障害の患者さんの回復とリワークのプロセスを理解し、自分の患者さんの復職に関して治療的なマネージメントができるようになることを目標とします。
作業療法;個人作業、共同作業。
心理プログラム:オフィスワーク、自己理解ワーク、ストレスマネジメント、対人関係療法、社会的スキル訓練、集団認知行動療法、事例検討ディスカッションなど。

外来集団精神療法

当院では外来小集団精神療法を行っています。
週一回、決められた曜日と時間に、6−8人のメンバーが集まり、セラピストともに、安全な空間の中で、自由にどんなテーマでも感情を表現しながら語ることを目標とします。
1クール 6ヶ月 約20回のセッションですが、グループの凝集性が高まると、患者さんの普段の生活から想像される以上の力が発揮できるようになります。
後期研修医は副セラピストとしてセッションとアフターティングに長期間参加することができ、グループセラピーを体験し、臨床に生かせるようになります。


 3年目以降

慢性期病棟(閉鎖病棟)での研修

A3A4B1病棟は、重度かつ慢性な経過をとっている患者さんの診療を行います。精神的な問題のみでなく、身体的な問題の対処や社会生活面での対応も勉強していきます。また長期にわたって病気を患っている患者さんが多いため、各主治医と連携して本人とそのご家族の心情も考慮しつつ、社会復帰に向けて適切な治療計画を組み立てることを目標にしていきます。

社会復帰病棟での研修(B2病棟)
社会復帰病棟では、慢性期の統合失調症の患者さんを中心に、入院が長期化した患者さんの地域移行、退院促進を多職種チームが関わることで進めています。また同病棟では、急性期のみでは治療が十分でない患者さんの回復過程にも対応していきます。慢性期の患者さんが抱える様々な問題点を把握し、多職種チームの一員となって社会復帰の援助を進めていくことを目標にしています。

(研修内容)
・統合失調患者の社規復帰のためのプログラムを学ぶ
・病棟スタッフとのチームワークの仕方を学ぶ
・訪問診療・看護の仕方を実践して学ぶ
・地域どの生活に何が必要か、何を支援していけばいいのかを学ぶ
・地域の支援組織とどのように連携すればいいのかを学ぶ


1日のスケジュール(例)

 午前9時  医局に集合、当直医から報告、その日の予定(新患や入院予定など)の確認
 午前9時20分 病棟での引継ぎを受け、病棟医とともに行動制限のある患者の回診。
その後、病棟業務(入院患者のケースカンファレンスに参加、受け持ち患者の診察、処方を行う、個人作業療法、集団精神療法に参加するなど)。新患の外来を陪席する
 
 午後0時30分  食堂で昼食
 午後1時30分  外来にて診察。救急患者の対応
 午後3時  再び病棟にて業務(個人精神療法や家族との面接など)
 午後4時30分  夜勤者への申し送り
 午後5時  医局にて指導医と症例のディスカッション、文献検索など
 午後6時  帰宅



どのような診察が行われているか ー具体例をとおして


 診療のシステムとしては理解できても1例1例の症例をどのように診療しているのか知りたいと思われる先生方のために、具体例をお示しして当院での診療についてご理解いただければと思います。
(症例についてはプライバシーを考慮して内容を変更してあります)

非けいれん性てんかん重積状態の診断と治療
30歳半ばの女性。総合病院から心因性の昏迷を疑われて入院してきました。全身的に衰弱しており、腰部に大きな褥瘡がみられました。昏迷の期間が長く、明らかな心因もみつかりません。そこで器質的要因を検索する必要があると判断し、脳波を記録したところ高電位波の中に棘波を伴い非定型の棘徐波複合がみられました。非けいれん性のてんかん重積状態と診断し、抗てんかん薬を調節して1ヶ月近くかかって昏迷状態から脱却しました。

PTSDの曝露療法
40歳半ばの女性。5年前交通事故にあい、その場面が浮かんできて不安になり日常生活を安定して過ごせないと述べておられました。フラッシュバック、夜間の頑固な不眠が続きました。いくつものクリニックや総合病院精神科に通院しましたがなかなか改善しませんでした。当院受診し入院後、面接の中で事故に対する強い不安と緊張を認めました。不安に対する対処法、不安の評価法などを学んだ後、曝露療法を行いました。不安緊張は著名に改善し、頑固な不眠も消退して退院しました。日常生活に支障はなくなりました。

うつ病患者の認知行動療法
40歳はじめの男性。うつ状態で数回の入院を経験。軽うつ状態を呈していました。認知行動療法を勧めたところ希望されたため、外来でスケジュールを組み、1回/週の治療を開始しました。宿題を含めた通常の認知行動療法を行いました。14セッションを行い終了としました。その後は月に1回の外来通院をしていますが、職場でストレスが加わると認知行動療法の対応を思い出して乗り切っていますと述べておられます。その後は深いうつ状態に陥ることなく生活しておられます。

うつ病患者のリワークプログラム
30歳はじめの男性。職場の不適応で退職した後、軽うつ状態が続き、認知行動療法的な面接を行いましたが復職しようという意欲が湧かず、家でTVをみるか横になっている生活が続きました。リワークプログラム参加を勧めたところ乗り気になり、2回/週のプログラムに参加されました。「同じような悩みを抱える人がいて話し合え安心しました。参加して集中力が高まってきました。」とのべ2か月ほどで大学時代自分が学んだことが活かせる職場がみつかったと就職し、働いておられます。

統合失調症患者の身体合併症治療
60歳はじめの男性。慢性の統合失調症でひとり暮らし。ヘルパーがトイレで出血を確認。腫瘍マーカーが高値のため悪性腫瘍を疑い、総合病院受診を勧めましたが、拒否をされました。年金を使い切って数日食事をとれず脱水状態になっているのを訪問看護でみつけ医療保護入院しました。はじめは内科受診をいやがっていましたが主治医、看護師が付き添ってなだめすかして総合病院で大腸内視鏡検査を受けていただきました。その結果直腸がんがみつかりました。手術可能ということで手術受け入れ病院をさがし、精神科と外科のある都立病院で手術を受けた後、当院に再入院されました。リハビリを行い、地域の支援組織と何度も打ち合わせの会合を行い退院されました。2週間に1回の訪問診療をおこない、地域の支援組織との定期的な打ち合わせを行いながら生活を支えています。

摂食障害の治療
30歳後半女性。家族関係に問題がありましたが、挫折をきっかけに食に対する拘りが生じそれから離れられなくなりました。拒食、過食、自殺企画などを繰り返したため、他院の精神科病院で長期間にわたる入院生活を送りました。知り合いに紹介され退院して内観療法を受けられました。内観療法終了後紹介され、外来治療を10年以上にわたって続けています。はじめは情動が不安定になり拒食傾向が強まり、変動が見られましたが、徐々に安定してきました。本人を理解し支えてくれる配偶者にめぐまれ、食への拘りが徐々に薄れ、結婚し幸せな生活を送っておられます。長期にわたり本人および家族に寄り添い支えて行くことの必要性を学びました。。

産褥期および産後精神障害の治療
20歳後半女性。 初めての出産後数週間してから、不安、不眠、不穏状態になりました。精神科病院に入院すると落ち着きますが、退院するとすぐ不安、不穏が出現し数回入退院を繰り返しました。当院紹介受診後も入院すると比較的落ち着きますが退院すると不穏になり自殺企画も認められました。一度不穏状態になると激しく興奮され拘束が必要なほどでした。薬物療法を行いながら、育児に対する不安を軽減する治療を、行きつ戻りつしながら行いました。家族の協力の下少しずつ子供に面会する時間を増やしました。家への外出、一泊の外泊から徐々に増やすという方針で本人を支え続けました。次第に育児への不安が軽減し子供に対する愛着も増え半年近くの入院治療後に退院できました。通常の母子関係が得られ元気に外来通院しています。振り返って子供にどう接していいかわからなかったと述べておられます。

訪問看護を利用している慢性期の統合失調症患者さん
30代女性。20代より発症し他院での治療を受け、家庭内で安定した生活を送っていました。親の体調不良をきっかけに不安感の増強と言動のまとまりが悪くなり当院に入院となりました。薬物調整で精神運動興奮状態の軽快をみましたが、些細な出来事をきっかけに不安焦燥と被害念慮が強くなり、衝動的な行為を繰り返してしまうため入院が長期化していました。看護スタッフともに不安に対する対処法を考えながら、閉鎖病棟から開放病棟へ移行し、退院前訪問看護を使って家族とも協力体制を作り、現在、訪問看護を続けながら外来通院治療を行っています。


以上のような治療が難しい症例に対しても根気よく診療を続ける姿勢を大切にし、症例ごとに振り返りを行い、反省すべき点は反省して次回の診療に生かし、症例経験を積み重ねるなかで、治療技術のスキルアップを目指します。


研修医 Q&A

Q:症例は集まりますか?

:GPEネットや輪番制度もあり、措置症例を含む急性期の様々な症例を経験することができます。熟練した専門医の指導のもと、初診から入院治療を経て退院後まで継続して治療を行い、治療経験を積むことが可能です。

Q:精神科単科というと暗いイメージですが・・

:平成24年8月に新棟が完成し、清潔感のある空間で、頭部CTなども完備され、より充実した診療が可能となりました。また、さいたま市にありつつも自然が多く、晴れた日の中庭はとてもきれいです。

Q:地域に根付いた治療を学ぶことはできますか?

自立支援病棟では、訪問看護も行っており、地域と密接した治療の経験が可能です。また、デイケアやリワークプログラムも行っており、外来診療とは違った観点からの、退院後の社会復帰支援の経験が可能です。

Q:休日は休めますか?

病棟医や当直医の制度が確立しており、休日に病院に呼ばれることはほとんどありません。また、家庭事情などに合わせて、勤務形態の相談も可能です。

Q:都心からのアクセスは?

最寄の大宮駅は埼玉県の中心となるターミナルビルであり、上野から30分、池袋から25分と、都心からも近く、多くの医師は都内より通勤をしています。大宮駅からは朝と夕方に専用バスがあり、路線バスも多くの本数があります。もちろんマイカー通勤も可能です。

Q:他科からの転向を考えているのですが・・・

現在、研修中の医師でも、他科から転科希望の医師がおります。また、入院中の症例でも、身体的な合併症に対して対応が求められることも多く、以前の専門分野の知識が役立つことも多いと思います。

Q:医局は関係ありますか?

東京医科歯科大学の関連病院となっていますが、出身大学は様々で、精神科に至るまでの経歴も様々です。経歴にかかわらず、精神科に興味がある方を歓迎します。


研修医からのメッセージ

■女性研修医(卒後6年、精神科後期研修4年目)

昨年4月より当院に転勤となりました。これまで勤務していた総合病院とは異なり、急性期から慢性期まで病状に合わせた治療環境において、より幅広い精神疾患の経験が可能であり、大変充実した研修生活を送っております。お陰様で無事3年の研修期間を経て、今年6月に精神保健指定医のレポートを提出する予定です。指導医の先生も経験豊富で教育熱心な方ばかりで、楽しい日々を送っております。

■男性研修医(他科より転科希望、精神科後期研修2年目)

単科精神科病院での治療においては様々な合併症を伴うことも多く、幅広い知識と技術・対応力が求められます。入院症例数は必要十分で、内容的には多岐に渡り豊富な経験を積むことが可能です。集団精神療法等にも参加でき、また院外での研修では医療観察法を学ぶ機会などもあります。極めて優れた精神科医集団による比較的自由な雰囲気での研修・勤務を希望する方は是非一度見学を。お待ちしています。



医療法人社団輔仁会 大宮厚生病院

〒337-0024
埼玉県さいたま市見沼区片柳1番地

TEL 048-683-1861(代表)
FAX 048-687-3310